子宝相談・妊活(不妊症)

<不妊症とは?>
日本産婦人科学会では、かつては避妊することなく夫婦生活を2年継続して、赤ちゃんができなかった場合を不妊症と言いましたが、いまは晩婚化などの影響もあり、早めに不妊治療を始めるきっかけになるようにと1年に定義を変更しました。

<漢方薬・鍼灸での治療とは?>
結婚して1年以上経つが、自然妊娠ができない。30代後半になり焦りが出てきた。人工授精や体外受精を繰り返してもなかなか子供に恵まれない。2人目ができない。そんな方々に!
<女性側>
卵巣の状態を良くし、良い卵ができるようにすること。
子宮の状態を調え、受精卵の着床能力を高める。子宮内膜をふかふかにし、血流を良好にする。子宮内膜を一定の厚さまで持っていく。
原因疾患つまり子宮内膜症・卵巣嚢腫・高プロラクチン血症・多嚢胞性卵巣症候群・冷え症などがあれば治療する。
<男性側>
精子の数を増やし、運動率を良くし、形を良くする(奇形率を減らす)など質の良い精子を作る。射精や勃起が、できないなどの性機能障害を治療する。

<不妊の原因>
不妊の原因は、男女双方にあり、割合は半々です。特に最近は、環境ホルモン(化学物質)、紫外線、ストレス、喫煙、食生活をはじめ生活・自然環境の急速な変化などにより不妊症の方が多いです。そのうち約10%が機能性不妊であると言われている。
1)女性の不妊症の原因
女性の不妊の原因には、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)、子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、先天奇経)、頸管因子(子宮頚管炎、子宮頚管からの粘液分泌異常など)、免疫因子(抗精子抗体など)、原因不明不妊などがあります。このうち排卵因子、卵管因子に男性不妊因子を加えた3つは頻度が高く、不妊症の3大原因と言われています。女性の不妊因子を下図に示しました。


2)男性の不妊症の原因
男性の不妊症の原因は、射精がうまく行かない場合(性機能障害)と、射精される精液の中の精子の数や運動率が悪くなっている場合(精液性状低下)に分けられ、後者は軽度・中等度・高度および無精子症に分けられます。 男性不妊の約9割が造精機能障害でストレス、飲酒、喫煙、肥満、病気、薬物が影響して起こることがあります。ストレスは、性欲減退、精子数減少、精子の運動量低下などを引き起こします。喫煙は、精子数減少、質の低下、精子の運動量を下げます。お酒の飲み過ぎは、精子を作る力を下げます。精子は、熱に弱く、長時間、下半身を温めない方がよろしいです。精子数や運動量が減ったりします。また、自転車やバイクなどで下半身を圧迫すると血行が悪くなり、体に十分な栄養が行き渡らなくなり精巣機能に影響を与えます。締め付け過ぎないように!

<不妊症の検査>
1年を経過した時点で妊娠しなかった場合。子宮内膜症、子宮筋腫、月経不順がある方や35才以上(卵子が少しずつ老化する)の方は、6カ月程度タイミングを取り妊娠しない時には検査が必要。
漢方的、西洋医学的にも基礎体温を測定し記録する。


以下は、西洋医学的検査
1)女性側
(1)一般的な検査
①内診、経腟超音波検査
婦人科診察室の診察台の上で行います。子宮・卵巣をおして痛い所があるかどうかを見るとともに細い超音波プローブを膣から挿入して子宮筋腫・卵巣嚢腫・子宮内膜症などの異常がないかを確認します。

②子宮卵管造影検査
X線による透視をしながら子宮口から造影剤を注入し、子宮の形や卵管が閉塞していないかを見る検査です。少し痛みのある検査ですが、この検査の後、自然に妊娠することも多く、大切な検査です。

③血液検査
血液を採血し、ホルモン検査や糖尿病など全身疾患に関係する検査を行います。女性ホルモン・男性ホルモン・卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン・プロラクチン・甲状腺ホルモンの検査を行います。

(2)特殊な検査 一般的検査で疾患が疑われる場合
①腹腔鏡検査・子宮鏡検査
腹腔鏡検査は、臍部からカメラを入れてお腹の中を観察する手術で、全身麻酔をかけ手術室で行います。これにより子宮・卵巣をはじめとする骨盤内臓器の状態が確認でき、子宮内膜症や卵管周囲の癒着などの今まで分からなかった不妊原因が分かることがあります。
子宮鏡検査は、卵が着床する場所を直接観察する検査で、麻酔をかけずに行えるため外来で行えます。この検査でポリープや筋腫などの腫瘍性病変や内腔の癒着など確認できます。

②MRI検査
子宮や卵巣形態の詳細な情報が得られます。子宮筋腫や子宮内膜症病変の診断に有効で、更に卵管水腫など他の不妊原因となる疾患も見つけられます。

2)男性側
精液検査と泌尿器科的検査に分けられます。精液検査は、受診されたほとんどの方が受ける一般的検査で、泌尿器科的検査は、精液検査で疾患が疑われる場合に行われます。
(1)精液検査
精液量、精子濃度、運動率、運動の質、精子の形態、感染の有無などを検討します。
※精液検査の正常値は、精液量1.5ml以上、精子濃度1500万/ml以上、総精子数3900万/射精以上、前進運動率32%以上、総運動率40%以上、正常精子形態率4%以上、白血球数100万/ml未満。

(2)泌尿器科的検査 精液検査で異常を認めた場合に行なう
①診察
不妊症に関連する病気の既往の有無、勃起や射精などの状況確認。精巣(睾丸)などの外陰部の診察、精巣サイズ測定、精索静脈瘤の有無を調べる。

②内分泌検査
男性ホルモン(テストステロン)、性腺刺激ホルモン(LH,FSH)、プロラクチンなどを調べる。これにより精液異常の原因を検索できるので勃起障害や射精障害がある場合にも必要。

③染色体・遺伝子検査
精子数が、異常に少なかったり無精子症の場合には、染色体の軽微な変化や遺伝子異常が、精子形成障害の原因になっていることがあるので、この検査をする。また、精巣内精子採取術などの治療の可能性を検討する上でも大切である。

④特殊な検査
精子の機能を調べる検査、精嚢や射精管の形態を調べるMRI、精巣での精子形成の状態を詳しく調べる精巣生検、勃起能力を調べる検査など。

<不妊症の治療方法> 西洋医学的には・・・
いくつかのステップで進めていきます。
漢方薬・鍼灸治療は、こういった西洋医学的治療に並行して行うこともできますし、まず漢方薬・鍼灸治療で妊娠しやすい体づくりをした後に、自然妊娠が無理な場合に下記のようなステップをおって行なって言っても良いでしょう
ステップ1)タイミング法
検査の後、大きな問題点が無ければ、20代など比較的年齢の若いカップルの場合、「タイミング法」で自然妊娠を目指します。排卵日を予測し、姙娠確率の高い日に夫婦生活をもちます。通院して約1年は、この方法をとるのが一般的です。
①毎日、基礎体温表を測定する。
②排卵日予測検査薬を使用する。
③超音波検査
などがタイミングを合わせる助けになります。特に超音波検査による排卵日の特定はタイミング法の精度を上げ、自分で排卵日を予測するよりも姙娠確率の高い日が分かります。

ステップ2)排卵誘発法
タイミング法と合わせて排卵誘発剤を使う。

ステップ3)人工授精
ステップ1~2までで妊娠しなければ人工授精を行います。人工授精は、男性から採取した精子を女性の子宮に注入する治療法です。排卵誘発剤も使って妊娠の確率も高めつつ、人工授精をすることもあります。

ステップ4)体外受精
人工授精を数回行っても妊娠しない場合、体外受精へ。卵子と精子をいったん体外に取り出して受精させ、受精卵がある程度、成長したところで子宮に戻す治療法です。卵管が詰まっている場合や男性側に原因がある場合や女性の年齢が高い場合などは、より早い段階で体外受精をすることもあります。
※子宮内膜症や筋腫などがあれば治療後に上記治療を行ないます。

<女性あるいは夫婦二人で行う妊娠しやすい体づくりの方法>養生法
妊活の基本は、心身共に健康的な生活を送ること。生活習慣を改め、新陳代謝を高めることにより生殖器の働きを活発にし妊娠力をアップしましょう。
ポイント1)生活リズムを整える
体内時計にあった生活リズムを作り、体に余計な負担をかけずに過ごします。夜早く眠りにつけないという人は、「早起き早寝」でリズムを整えます。
○休日の寝だめは普段の睡眠リズムを狂わせ、ホルモンや自律神経のバランスを乱すので避ける。
○寝る前にスマートフォンやパソコンの画面を見ないようにする。夜にブルーライトを浴びると睡眠リズムに影響し、寝ている途中で目が覚めてしまう事があります。充分に睡眠をとる。

ポイント2)規則正しい食生活
1日3回、 なるべく決まった時間に食事をとるようにしましょう。食事のリズムが、生活全体のリズムにも影響します。
○朝食もキチンと食べる習慣を身につける。
○夕食時間が遅くなったら、消化の良いものを食べる。
○男女共にタバコは止めて、お酒は、ほどほどにする。
喫煙は、血流を悪くしたり、ホルモンの分泌量を減少させるなど、姙娠を阻害する要因になります。胎児の先天性異常や発育に影響を及ぼすこともあります。さらに、男性の場合は、精子の数の減少や質の低下につながります。また、お酒の量にも注意し、過度に摂取すると男女共に生殖機能が低下します。

ポイント2')薬膳の智恵を取り入れる
冷え症の方には、体を温める「温性」「熱性」「辛味」の食材が、よろしいです。

ポイント3)冷え性対策  漢方薬、鍼灸治療の特異な分野です。
冷え症の人は、血行不良を起こしやすく、酸素や栄養素、ホルモンが子宮、卵巣に十分に行き渡らず、子宮や卵巣の機能に影響を及ぼします。そして、生理周期の乱れ、月経痛などを引き起こしたりします。日頃から体を温める工夫をしましょう。
○下着を一枚増やす。締め付ける下着も避ける。露出の多い服を避け、手足や腰、首回りなど冷えやすい部分を温める。腹巻、レッグウォーマー、靴下などを活用する。
○体を温める食べ物をとり、体の中から温めるように。
○お風呂で、体を芯から温める。湯船につかるようにし、ぬるめの温度で長時間かけて入浴する。また、入浴剤なども上手く活用する。生薬の浴剤などもあります。
○ストレスによる自律神経の乱れも冷えの一因。

ポイント4)適度な運動  
女性は、子宮や卵巣の状態を良くするために適度な運動をしましょう。血行が促進され、正常なホルモンバランスを維持することにつながります。体力強化、ストレス解消、肥満防止などの効果も。 男性も男性ホルモンの生成と関係があると言われています。
ポイント5)ストレスを溜めない
過度なストレスは、自律神経のバランスを崩し、月経不順や排卵障害などを引き起こします。
男性の場合は、勃起不全や射精障害にもつながることがあります。
妊活により、ストレスをため込んでいる方が、多いです。妊活は、気負わず楽しく行ないましょう。